昔からお世話になっている松江腎クリニックの掲示板で,静脈圧が上昇する件での話題が続いています。
同掲示板に書き込んだほうが,みなさんの目に触れていいのかもしれませんが,あまりにも独断的内容になりますので,ここで説明させて戴こうと思います。
それでは・・・
ボタンホール穿刺の場合,スパっと1回で入らいない場合は,どうしてもボタンホール内,血管壁面をダルorペインレスニードル・外筒で傷つけてしまいます。
この時,外筒壁面にフィブリンが付着するようです。また,内筒針(ダル,ペインレス)を抜く際にも引き込まれるのではと思います。
作業をモタモタしているとクランプキャスの場合,クランプ部内にもフィブリンが付着している時もあります。指先で揉むと・・・飛んでいきますが・・・これも外筒壁に絡まったりすると思います。
普通針でも同じようなものですから,ボタンホールだから静脈圧が上がると言うよりはむしろ,手技に要する時間が大きいような気がしています。
ところが,外筒にサイドホール(側孔)の無いタイプを試すと,殆ど静脈圧が上がることはありません。
何故でしょう?
ここからは,仕事柄経験してきた内容が含まれます・・・異業種交流
実は・・・こんなふうな事が起こっているのではないでしょうか?
つまり,流量確保を狙って作られたはずのサイドホールにフィブリンが詰まって,そのフィブリン・・・もはや血栓状態・・・が,サイドホールから外筒内に「ワカメのように」流れ出て,血流を阻害していると考えています。
サイドホールはかなり小径ですから,辺血時には殆ど流れがなくて,センターホールから流れようとするでしょうし,むしろ主たる流れに引き込まれるアスピレータ(ベンチュリ効果)のような機構が働くように思います。気体ならエジェクターと言った方が判りやすいでしょうか?
流量確保のはずが,外筒の外から内に向かう血液の流れが生じてしまい,既に少なからず発生していたフィブリンが成長する程度の緩やかな流れが発生しているのではないかと考えます。これはもう・・・悪循環です。
サイドホールがない場合は,血流による全ての圧力が,一穴に集中するため,フィブリンが絡む間も無く一様な流れが生じやすいのではないかと。
逆に,脱血側では内筒内のフィブリンを吸引除去する効果が働いて,新たなフィブリンが発生することはない(血管内に発生していれば別ですが・・・それはそれで大問題)ために,サイドホールは流量アップの効果を維持し続けられるのではないかと思います。
製造工場でよく使うポンプ類でも同様の現象が観察されます。
吐出側でフィルター類に異物が堆積すると直ぐに差圧が大きくなり,ポンプは悲鳴を上げますが,サクション側ではある程度の道が確保されていれば,ポンプは楽々と動き続けます。(限度を超えるとキャビテーションを起こしていしまいますので絶対ではありませんが・・・)
閑話休題
この場合,生食入りの注射器でパンピング(ポンピング?)するなどして,フィブリンを吸い出してしまう手技で効果があります。が,片手での作業は結構難しい・・・
そこで,静脈チャンバーなどをシゴイて,静脈圧を急激に高めることで,フィブリンを外筒から血管内へ押し出す事を試みます。
この時もサイドホールが邪魔をします。
パンピング時も,チャンバー圧を一気に上げても,勢い良く流れるのはメインのセンターホールのみで,サイドホールのワカメ状フィブリンは容易には飛んでくれません。
パンピングを「一気に」行うことがコツになります。
ここまで書いて,私は未だにサイドホール付きダルニードルを使用しています。
実は,サイドホールがないタイプの唯一の問題点「血管壁に当たると流れが止まる」為に,肘に近い位置で穿刺をする私の辺血部位では,少し肘を曲げただけで静脈圧上昇アラームが鳴りっぱなしとなって安眠妨害に。
何れ穿刺部位が変われば迷わずサイドホールなしに変更する予定です。
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